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Music People Vol.79 佐藤英也

私の吹奏楽との出会い、そして現在の活動

 小田原にある新名学園旭丘高等学校の吹奏楽部顧問をしております、佐藤英也です。本校の創立120周年記念として清水大輔先生に委嘱させていただいた曲「生、想、来(Ki - O - Ku)」が「究極の吹奏楽〜小編成コンクール」シリーズにて出版されることをきっかけに、ご縁をいただきました。

 今回は私の吹奏楽との出会いや当部の活動について、僭越ながら書かせていただきますのでお付き合いください。吹奏楽との出会いは中学生のとき。スポーツ障がいにより手術し、小学生から続けていたサッカーを続けられなくなったことにあります。サッカーを辞めてから、途中でやめなければならない悔しさがとても大きくなっていきました。もう中途半端ではなく「ずっと続けていけるものがしたい」というとき、高校で吹奏楽に出会いました。

 兄が幼い頃からトランペットを続けていたことも部活見学にいく理由の一つでした(兄も神奈川大学でも続け、現在も指導者として活躍中です)。結果的に兄を追いかける形でしたが、同じ楽器は嫌だとホルンになりましたw 保育園でオルガンを練習していたのですが、見事に忘れており、さらに酷いことに音楽の授業もほぼ関心がなく、高校1年の春は「ドってどこだっけ?」からの再スタート(今は幼児期に教わったことがベースになっているなと感じています。先生方すみません)。

 その後、アルフレット・リード作曲の「エル・カミーノ・レアル」を最初に演奏することになり、吹奏楽の沼にハマっていくのですが、多くの部員が経験者の中で少数の初心者だったので、人前で練習するのが嫌でマウスピースでコソコソ練習しました。ホルンは高いB♭やCが当たり前なんだ、ヤバい楽器だなと勘違いをして吹けない自分が悔しくて必死に練習したのを思い出すと我ながら笑えます。

 21歳、楽器を吹きたいだけの自分に大きな転機が訪れます。立正大学吹奏楽部に佐藤正人先生が指導者として来てくださり、演奏することへの意識が変わりました。先生の作り出す音楽や響き、先生のエネルギーから、とてつもなく広い世界観のようなものがあることを下手なりに感じました。部員全員が必死に練習し(自分は結局いつも必死ですw)、立正大学は翌年の吹奏楽コンクールで創部初の全国大会に出場。この出会いがなければ、指導者という道も全く縁がなかったと思います。先生に出会うことで本当に人生が変わりました。感謝しています。今も尚、先生は目標でありますが、自分にしかできない音楽や、音楽を通じた生徒の成長を模索するため、多くの先生方の合奏を見学させていただいたり、部活に来ていただき合奏指導を受けたりしました。

 その中のエピソードとして、ある学校の吹奏楽部に元東京都交響楽団の山本洋二先生がレッスンされているきに見学に行った際、お昼休みに先生方と食事中、指揮の悩みを話したところ、「じゃあ、今その指揮を振ってみなさい」と言われファミレスで割り箸を使って指揮のレッスンを受けたとこは忘れられません(となりの小さいお子さまにジッと見られ、お母さんに見ちゃいけません、と言われたのは言うまでもありません)。

 色々とありまして現在にいたるわけですが、今回は、旭丘高校の教員として顧問をするにあたり、地域での合奏トレーナーや指揮を振らせていただく際に大切にしている幾つかを書いてみようと思います。最も大切だと感じるのは、「どう吹きたいのか」「どう間違えたのか」「どういう理由で間違えたのか、うまく演奏できなかったのか」を考える習慣や考える力を養うことです。効率よく練習するために必要な練習方法や手法は、多くの先輩指導者の先生方が作ってくださいました。それをどう活かしていくのかは生徒一人ひとり次第ですが、何も言わなければ自分なりに音を出すことができればOKということも多々あります。当然定期的に指摘して意識を落とさないようにするのですが、常に意識できる環境づくりが顧問の仕事かなと思っています。生徒たちが「こだわる」「いいものをつくる」をいつもセルフチェックしたり、クリエイティビティを持って練習したりできたら素晴らしいことですよね。

 音楽は「曲を作る人」「演奏する人」「聞いてくれる人」がいて成り立っています。ここに「ものへのこだわり」と「人とのつながり」が加わることで、次の3つを関連づけることができると考えました。
①1年に1回は作曲家の先生にレッスンを受ける。作曲家の意図を知り、音楽づくりに活かすことはとても大切だと思います。音楽の構造、表現、想いなどを直接聞くことができるのですから、少しでも曲を理解して練習に臨めると思っています。
②当部は自主公演を年3回行っていますが、地域の学校と合同演奏のほか、音楽大学の学生やプロの演奏家に来ていただき、演奏を聴く機会を作っています。多くの人の音楽に触れること、地域で活動していることへの感謝、音大生や若い人たちの素晴らしいエネルギーを発信できるお手伝いを、という思いで始めましたが、部員も演奏会にたくさん足を運べるわけではないのでとてもいい勉強になっています。
③演奏会は身近で敷居なんてものはなく、音楽は自然に全ての人のそばにあるものであってほしい。と思い、司会はお笑い芸人コンビ、ジャジャジャジャーンさんに分かりやすく楽しいMCをしていただき、聴いて楽しく観て楽しい演奏会を追求していこうと思います。

 さて、その活動で生徒たちがどう変わったかというのが肝心なところですが、素晴らしいことにどの学校に行っても生徒たちがただ練習するようになるだけでなく、楽しく活動するようになってくれたのです。顧問の仕事は、音楽も大切ですが、生活指導を通して音楽を生涯学習とすることが大切なのではないかと思うようになりました。現在Uniful Wind Ensembleという一般団体でも活動しています。旭丘といつも合同演奏をしていただいている県立高校の卒業生たちが創立した楽団です(当然卒業生でなくても入れます!)。音楽を続けたいという想いを持っていてくれることが嬉しいです。世代を越えて繋がる音楽の場を具現化してくれました。今後も勉強を怠らず、より良い音楽と楽しい音楽を一緒に演奏できるよう頑張っていこうと思います。

佐藤英也【さとう・ひでや】

新名学園旭丘高等学校吹奏楽部顧問
三嶋大祭り音楽パレード音楽監督
Uniful Wind Ensemble常任指揮
静岡県立伊豆総合高等学校吹奏楽部ほか中学校吹奏楽部を複数指導

 

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