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Music People vol.62 徳原佳奈美

音楽と私


 私が中学生の頃(作曲家天野正道氏と同じ出身中学校の後輩です)、秋田県は吹奏楽も合唱もとても盛んでしたが、残念ながら吹奏楽部には入らず、中学では絵画部、高校ではフォークソング同好会、大学では軽音楽部(ジャズ研)と、吹奏楽とは縁のない学生時代を過ごしました。中学校で採用されてすぐに小学校へ移り、中学校に戻った後もしばらく合唱部の顧問をしておりましたので、吹奏楽のキャリアが浅い私ごときに吹奏楽のなんたるかを語ることはできませんが、これまでの人生の様々な場面で音楽に支えられてきたことは確かです。

 以前、大病を患ってしまったときにも、息子が病室に持ってきてくれたiPodから流れる音楽が、私に立ち直る勇気を与えてくれました。退院後は、一日も早く復帰したいという思いでピアノや歌に没頭し、近くの公園や神社まで散歩に出かけては、風の音や鳥のさえずりに耳を澄ませる毎日でした。復帰後初めての授業や合奏で何をやったのか、夢中だったのでよく覚えていませんが、「音楽室に戻ることができた!」という喜びでいっぱいでした。

 先日、闘病の末復帰した競泳の池江璃花子選手が、日本選手権で4冠を達成し、「努力は必ず報われる」、と涙ながらに語った言葉が心に響きました。そして、あのときの喜びをふと思い出しました。私は池江選手のように大きな目標に向かっているわけでもなく、彼女の努力に比べたら、私の闘病生活なんて生ぬるいものです。そんな私でも、困難に立ち向かい、前向きに生きようとする姿に共感し、まるで自分のことのように嬉しかったのです。

 このコロナ禍で、今まで当たり前だった日常が大きく変わろうとしています。人との関わりが制限される中で、心をつなぐ音楽の力がより注目されているように感じています。日々変化し続ける状況の中で、できなくなったことを悔やむよりも、できることを探して、何事も前向きに取り組んでいきたいと考えました。3密を避けるために、コの字型の校舎の窓から中庭に向かって合奏をしたり、凍える寒さの中、廊下に一列に並んでブレストレーニングをしたりして、工夫しながら練習してきました。

 さらに、部員を増やすために、学校祭の代休に学区の小学校を訪問して演奏会を行ったり、本校体育館でコンサートを開催したりしましたが、残念ながら今年の新入部員は8名でした。それでも、吹奏楽コンクールには大編成で出場することになります。楽器を持ったばかりの新入部員8名を含めた38名で、今年度のスローガンである「輝響」をめざし、新たなサウンドをつくっていきたいと思います。

 これからもピンチをチャンスに変えて、音楽と私のドラマはまだまだ続いていきます。

  

徳原佳奈美【とくはら・かなみ】
秋田市立城南中学校
吹奏楽部顧問

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