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【新譜紹介】2020〜2021アメリカ、バーンハウス社より

秋山紀夫のバンド指導ヒント

 さて、今回はアメリカのバーンハウス出版の2020-2021年を中心に新刊を紹介しましょう。21世紀も20年経過し、作曲者にも新しい人が現れてきたようで興味深いです。数多い曲からグレード3以上の曲を紹介します。
 バーンハウス社には「Walking Frog Records」というCDレーベルがあり数多くの素晴らしいCD作品を出していましたが、昨今のCD販売の状況でしょうか、CD制作はやめてしまったようです。時代の流れとはいえ、とても寂しい気持ちがします。

最後の光が消えるように - ジェレミー・ベル

最後の光が消えるように - ジェレミー・ベル  

イリノイ州ベオリアブレッドリー大学からアリゾナ州立大学で学んだジェレミー・ベルが作曲した曲。彼は現在アリゾナ州テンピのコリンズ大学で作曲、ピアノ、フルートなどを教えています。曲は日没の情景を描いたもので、太陽が地平線に消えていく時の心の動きを音楽で表現しようとした曲です。4分の4拍子のゆっくりした抒情的な曲で、木管の動きが美しいです。ハーモニーは基本的なので、各パートのアンサンブルやバランスの練習、旋律を歌わせる表現の練習に向いています。グレード3、3分43秒。(秋山紀夫)



 


巨人の剣 - ロッシーノ・ガランテ

巨人の剣 - ロッシーノ・ガランテ  

作曲者のロッシーノ・ガランテはニューヨーク州バッファロー出身、同地のニューヨーク州立大学を1992年トランペット専攻で卒業、同年南カリフォルニア大学の映画音楽プログラムの19人のクラスの一人として選ばれ、映画音楽作曲を学びました。1999年には「Omen」のスコアでアカデミー賞を受賞。それ以来カリフォルニアに住み映画音楽の仕事を続けています。曲は、タイトルのように、古代の巨人が持っていた魔法の剣を戦いの最中に落としてしまい、それを探す冒険を描いているものです。たいへんドラマチックな曲。幅広い4分の4拍子で、マレットと木管の16分音符の動きで開始され、金管楽器がダイナミックに加わります。中間は4分の3拍子でフルートやオーボエのゆっくりしたソロの後、クラリネットが歌います。これに絡まる対旋律も美しいです。次第に力を増して、4分の4拍子に戻って力強く終わる3部形式の曲。グレード4.5、6分21秒。おすすめです。(秋山紀夫)



 


果てしない勇気 - ジョン・パスターナク

果てしない勇気 - ジョン・パスターナク  

この曲は、米国で西部開拓にあたった人たちの、西海岸を目指してあらゆる困難に向かって挑戦した勇気をたたえた曲です。作曲はジョン・パスターナクで、彼はケント州立大学出身で同大学の編曲スタッフを務めました。ASCAP(米国作曲者・出版社協会)のメンバー。曲はトランペットのファンファーレで開始され、それをテーマに主部となり、木管も加わり、2+2+3の7拍子のリズムで進んでいきます。中間部は4分の3拍子でおおらかな旋律となり、アレグロヴィヴァーチェの第3部でにぎやかに終わります。変拍子が面白く、おすすめの曲です。グレード5、5分37秒。(秋山紀夫)



 


シャンバハラの失われた都市 - ジェレミー・ベル

シャンバハラの失われた都市 - ジェレミー・ベル  

タイトルはサンクリット教の伝説によるもので、シャンバハラは「平和の地」の意味で、「雪山の向こうのそこに行こうとすると厳重な警護に守られていた」という言い伝えを表現した曲です。4分の3でゆっくり木管を中心に始められ、この部分はかなり長いです。次は打楽器に導かれてテンポの速い8分の7拍子の中間部に入ります。コーダは4分の4拍子に戻り、テンポを落としてファンファーレが高鳴り、盛り上がって終わります。おすすめの曲。グレード3.5、4分59秒。(秋山紀夫)



 


川と奇岩〜ある町の物語 - デイヴィッド・シェイファー

川と奇岩〜ある町の物語 - デイヴィッド・シェイファー  

この曲はすでに多くの曲を出版している、オハイオ州立大学出身のデイヴィッド・シェイーファーの作品。マサチューセッツ州のフィッチバーグで1735年に発見され名物となった大きな奇岩とそれにまつわる町の盛衰を表現した曲で、その街にあるフィッチバーグ・ミリタリー・バンド(市民バンド)の創立150周年記念に作曲を委嘱された曲です。曲は次の5つの部分で構成されています
a) 始まり:パワフルなマエストーゾで、ゆっくり始められる部分。
b) 繁栄:町が盛んになる変化を表現した行進曲スタイルの部分。
c) 人気が落ちて:産業が衰退してしまうことを表現した部分。
d) さびれる:その結果町が寂れてしまう部分でゆっくりもの悲しげな部分。
e) 復活:町が奇岩の観光とともに元気になり、希望を表す部分。
グレード3.5で分かりやすく、全曲で6分10秒。スコアに大きな奇岩と町の歴史の説明が掲載されている。
(秋山紀夫)



 


会話 - チャンドラー・ウィルソン

会話 - チャンドラー・ウィルソン  

作曲はチャンドラー・L・ウィルソンで、彼はマイアミの生まれで、フロリダA&M大学でサックスを学びマーチング・バンドの編曲もつとめ、その後ペンシルヴァニア州のインディアナ大学で指揮法を学び、修士号を受け、マイアミのいくつの高校のバンド・ディレクターを歴任し、現在はフロリダ州立大学の博士課程で勉強をしています。この「会話」は、アメリカ独立戦争についてのトーマス・ジェファーソンの声明の中から、「人種問題の平等性の”会話"が大切だ」とのことから、その「会話」を音楽に表現したものです。曲は4分の4拍子で打楽器のリズミックな導入により速いテンポで開始され、木管がファンファーレ風な主題を奏し序奏を作ります。次に転調してゆっくりと木管楽器が歌い、打楽器が細かく飾ります。4分の3に代わり、グロッケンの細かい動きの上にピッコロのソロが続き、トランペットのソロのあと、クラリネットが続きテンポを速めます。この辺はゴスペル・ソングの模倣だと作曲者は述べています。4分の4拍子で高まり、最後はテンポを落としてフルートのソロで曲を閉じます。グレード4、6分6秒。 (秋山紀夫)



 


台風の響き - ジョン・パスターナク

台風の響き - ジョン・パスターナク  

作曲者のジョン・M・パスターナクはケント州立大学で学び、同大学のバンドやマーチング・バンドの編曲もしていました。現在はクリーブランドのワレンスヴィル高校のバンド・ディレクターです。この曲は指を鳴らすスナッピングやヴィブラフォンの特殊効果を使って台風の来襲を表現した曲です。ウィンドチャイムやヴィブラフォン、スナッピングで自由に表現しながら始まり、ユーフォニアムが不気味さを表現します。そして次第に高まり、4分の7拍子のリズムをティンパニが導き出し、低音楽器が不安気に加わり、台風の接近を暗示。やがて2+2+3の8分の7拍子となり、激しさを加えます。8分の7拍子に8分の8や4分の4のリズムが変拍子風に混じり、クライマックスを作ったあと、ゆっくりした神秘的な感じの音楽となり、フルートのソロで台風が去っていく感謝をうたいます。最後ははじめの風音の効果で消えていきます。風変りな曲。グレード3.5、4分49秒。 (秋山紀夫)



 


3つの川〜鉄鋼の反映 - ジェイ・チャタウェイ

3つの川〜鉄鋼の反映 - ジェイ・チャタウェイ  

作曲はジェイ・チャタウェイで、彼は映画やテレビの音楽を作曲していて、映画「スター・トレック」の音楽で有名です。現在は西ヴァージニア大学の居住作曲家を務めています。この曲はペンシルヴァニア音楽教育協会の委嘱で、彼が昔住んでいた鉄鋼の町、同州モノンガヘラ谷を描いた曲です。打楽器が多用され、それが鉄鋼の工業的なサウンドを表現していたり、公園のバンドや、その地方の伝統のジャズバンドの音楽なども含まれています。曲は4分の4拍子で打楽器のロールで開始され、長い序奏をつくり、突然木管が細かく動き、速い主部に入リ、ユーフォニアムが歌います。打楽器と金管のリズムが快適な主題を導き出し、次のスウィングに移り、アルト・サックスの長いソロとなる楽しい部分で金管も加わっていきます。それが高まり、最後は今までの主題が組み合わされてコーダとなり終わります。市民バンドなどにおすすめの曲。グレード5、8分39秒。 (秋山紀夫)



 


グレイテスト・ジェネレーション - ロバート・W・スミス

グレイテスト・ジェネレーション - ロバート・W・スミス  

この曲は、すでに多くのすぐれた曲を出版しているロバート・スミスの作品。1941年 12月の真珠湾攻撃から75年たった2016年12月7日のために作曲した曲です。しかし日本に遠慮したのか、ナレーションはノルマンディ作戦の音楽に空軍バンドのアーノルド・ゲイブリエルが作った文章を使用しています。当然ナレーションなしでも演奏できます。曲は打楽器に導かれてファンファーレが高鳴り序奏を作っていきます。ゆっくりした第1部はクラリネットを中心に祈りのコラールのような主題が聴かれます。次第に曲は金管も加わって高まりますが、速いテンポにはならず荘重な音楽が続いていきます。ファンファーレが随所に聴かれ、最後に高まって終わります。愛国的雰囲気の音楽。グレード4、6分28秒。 (秋山紀夫)



 


 当時私が20才の時のことです。日本の大学の在り方に疑問視していた頃に、秋山先生のお陰で大きな転機を迎えます。私は中学高校時代に、雑誌『POPEYE』(アメリカの生活やファッションを日本に紹介する雑誌)を読んで育っていて、将来は絶対にアメリカで働きたいと決めていました。秋山先生とミュージックエイト創業者の父とは懇意の仲で、秋山先生が私をアメリカの吹奏楽出版社&楽譜問屋の「Southern Music Company」を紹介くださり、私はそこに日本の大学を中退し就職することができました。

 それから今まで30年以上、秋山先生はこのような海外の「新刊吹奏楽譜」の曲紹介を提供してくださっています。アメリカだけではなくヨーロッパ、アジアの曲も・・その数は数えられないほどです。

 そんな秋山先生の91才の誕生日の日のことです(もちろん先生の誕生日は覚えています)。偶然に街でばったりと先生にお会いしました。台湾からのバンド指導者2人を寿司屋に連れて行く途中だったとのこと。先生は誕生日でもどんな日でも吹奏楽のためには海外の架け橋をボランティアでやっている人で、先生のお蔭で、欧米から入ってきたこの「吹奏楽」が、日本だけでなくアジア各国でも育まれて繋がっています。

 そんなことで、自撮りはしたことのない私が、人生初の自撮りを先生とツーショットした写真がこれです。

 今でも講習会、ゲスト指揮、ゲストトーク等々、秋山先生には昔から今の今になっても感謝を言いきれません。

ロケットミュージック
代表取締役
助安博之

秋山紀夫【あきやま・としお】 秋山紀夫
 前ソニー吹奏楽団常任指揮者。現おおみや市民吹奏楽団音楽ディレクター。(社)日本吹奏楽指導者協会名誉会長、(社)全日本吹奏楽連盟名誉会員、アジア・パシフィック吹奏楽指導者協会名誉会長、WASBE(世界吹奏楽会議)名誉会員、浜松市音楽文化名誉顧問、アメリカン・バンド・マスターズ・アソシエーション名誉会員。ソニー吹奏楽団名誉指揮者。

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