Music People Vol.74 豊田千絵

私の大切な家族

　某月某日。スケヤスと名乗る人物から電話があった。最初は誰か分からなかったが、話をしている内に昔の苦い思い出が蘇ってきた。　あれは今から２０年程前。当時、違う出版社で働いていたスケヤスさんから吹奏楽部に関するコラムを頼まれた。私はその時の部活を動物園に例えて、面白おかしくコラムを書いた。しかし、部活を動物園に例えるとは何事だ、というご意見をいただき、そのコラムは削除された。いま思うと当然である。あの頃は若かった・・。そして今、スケヤスさんから再びコラムを頼まれた。これも何かのご縁であるが、もう失敗は許されない。何を書こう・・。そうだ、「困った時は教え子を頼れ」ということわざがあるように、早速、私のOBバンドである「CHIEZOシンフォニックバンド」のメンバーを頼ることにした。

ここで補足をしておくと、このOBバンドは、私が過去に勤務した中学校の教え子達が年に一度集まって、「CHIEZOファミリーコンサート」を開催しているバンドである。OBバンドと言っても、集まるメンバーは毎年違っていて、本番前にユルッと何回か練習し、当日のお客様はほぼ身内、というユルユルなバンドで、ついこの間まで高校生だった生徒から、アラフォーのおじさんまで様々である。そのメンバーたちに次のような質問を送った。
「あなたにとって中学校時代の吹奏楽部とは何ですか？」
すぐに様々な答えが返ってきた。

・全ての始まり
・恋人以上家族以上の存在
・分岐点
・サーカス団のような場所
・集団行動やマナーなどを学べた場所
・強くなれた場所
・吹奏楽人生の土台　
・原点であり、全てが人生の財産
・原動力であり、当時の仲間は今も自分を前向きにさせてくれる存在
・音楽を心から好きになれたきっかけ
・生きる力をつけた場
・今の私の基盤で、継続力や忍耐力、協調性を培った
・女性に逆らってはならないと学んだ場所
・心を一つにする大切さを知った場所
・嬉しいこともつらいこともたくさんあったけど戻るならまた同じ仲間と過ごしたい場所
・生涯の仲間と出会えた場所
・皆で切磋琢磨する楽しさを知った場所
・負けない心、根性を学んだ場所
・嬉し涙も悔し涙もたくさん流した場所
・一生の友と出会えた場所
・シャツをズボンにきちんと入れないと怒られた所
・目標に向かって努力をすること、そしてそれが報われる達成感を覚えた場所
・あの日々があるから今を頑張れる
・無敵な仲間と最強の先生に出会えた場所
などなど・・。
・・・この回答以上の何を私が書けば良いというのだろう。これらの言葉がすべてを表しているのではないだろうか。
　いま部活動は、働き方改革などで大きな変化を迎えている。そんな中で悩んでいる若い先生方やこれから先生になろうとしている方々にぜひ伝えたい。「部活動って面白いよ」と。もちろん大変なこともたくさんあるし、本気になればなるほど、生徒も教員もお互いつらい思いもする。しかし、生徒達と本気で笑って本気で泣いて本気でぶつかり合えるのは、とても幸せなことではないかと私は思う。そして部活動だからこそそのような経験ができるのではないだろうか。

　さて、先ほどの質問に教え子の一人がこう答えてくれた。「吹奏楽部は第二の実家であり、先生は第二の母」と（祖母じゃなくて何より）。第二の母としては、普段は忘れられているが、人生に行き詰まった時にふと思い出してちょっと相談してみるか、と連絡くれるようなそんな存在でありたい。

　教え子達は私の大切な家族であり、心の支えであり、明日も頑張ろうと思える活力である。彼ら彼女らに心から感謝したい。私と出会ってくれて本当にありがとう。これからも第二の祖母になるまで末永くよろしく！

　そして今日も私は、可愛い子供達と共に元気に汗を流す。

北区立滝野川紅葉中学校