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Music People vol.60 三浦恭子

音楽の世界の生き生きとしたもの


岩手県岩泉の郷土芸能
『中野七頭舞』の練習会にて。
東京都小平市で活動している
『一の会』という団体です。

 私は東京都の小学校で特別支援学級の教員をしています。支援学級の面白さに魅せられて、支援級の担任は今年で7年目になります。特別支援学級は、国語や算数はもちろんのこと、音楽、体育、図工もすべて自分で教材を探し、子どもの発達段階に合わせて授業を作っていきます。ここが特別支援学級の醍醐味だなと私は常日頃思っています。今回は私の実践している音楽の授業について少しだけ紹介させていただきます。



 教材を自分で選ぶことができるので、文部科学省の学習指導要領や音楽の教科書を基本にして、私は民間の教育団体である、東京音楽教育の会で学んだものも取り入れ授業をしています。曲はシューベルト、モーツァルトなどの名曲や日本の作曲家、林光さんや丸山亜季さんが作ってくださった曲が多いです。林光さんは日本語のオペラや映画音楽、大河ドラマの曲等の作品を多数遺しています。丸山亜季さんは人形座という劇団の作曲家でした。戦後、群馬で素晴らしい教育実践を行っていた斎藤喜博先生の小学校で数多くの作曲をされていました。亜季さんが中心になって作った「リズム表現」という教材があります。ピアノを聴きながらスキップをしたり、トンボや大ワシになって動いたり、その他にも体操の技である側転や、ロンダートをしたり、子どもだからと言って動きに手加減はありません。非常にアクロバティックで、リズムを始めたころは全身筋肉痛に悩まされたものでした。



 「リズム表現」で大切にしていることは「楽しいからやる」という考えです。ピアノを聴いて夢中になって体を動かす。自分が「こうだ!」と思って体を動かすことは子どもだけでなく大人だって楽しいです。そして上級生や大人のかっこいい動きを見て、「自分もああなりたい」と憧れて夢中になって動くうちに子どもは様々な動きができるようになっていきます。身体表現と同じように歌も子どもは自由に表現表現していいと私は考えています。子どもが歌のどこに心が動いたのか、ピアノはどのような働きかけをしたら良いのか、子どもの歌を録音して東京音楽教育の会の例会に持っていき、会員同士で実践を聴き合いながら学んでいます。



アイヌの方に唄と踊りを習いに。
帯広にて。

 子どもの歌の中から毎回新しい発見があり、とても楽しいです。子どもに今どんな教材が必要なのか、子どもは今本質的に何を要求しているのかを考え、それが必要な時に、的確に生き生きと歌を渡すことをいつも意識しています。自分の感覚を目いっぱい開き、子どもに歌を渡すとき、自分自身が豊かでないと、子どもとはいつも新鮮な歌の出会いはできないなぁと思っています。そのためには常に自分の内面を新しく膨らませていく日常の学びが大事です。
 教師自身がたくさん学んで豊かな自分であることで、音楽の世界は生き生きとしたものになり、その音楽のもつ本質的なものが子どもの心に働きかけ、その歌を歌いながら子どもが育っていくと思います。私は「学校は文化を伝える場」だと考えています。子どもたちがたくさんの文化に触れられるように、音楽の授業にはアイヌの唄や踊り、沖縄のわらべ歌、モンゴルの歌、日本の民族舞踊なども入れています。子どもの感覚は素晴らしく、どんなものでも吸収してしまいます。だからこそ芯のある教材を子どもに渡し、新鮮で豊かな自分であるために常に勉強し続けることの大切さを感じています。

三浦恭子【みうら・きょうこ】
板橋区立赤塚新町小学校
特別支援学級担任

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