Music People Vol.93 會田瑞樹
『余白の中で得たもの』
音楽家は旅人である、とよく形容されることがある。定められた居場所にいられることは稀だ。何かの演奏会があるごとに、チームが組まれ、その演奏会が終わればチームは解散となる。居場所、は自分が見つける。僕は余白を常に探している。
一方で学校は、定められた居場所で全てが繰り広げられる。教室には自分が使う机と椅子やロッカー、つまり、定められた空間が用意される。けれど、教室は時に息苦しいこともある。だから部活動、という余白は、共通の興味のもと、同じ志を持ったものが集まる。学年も、クラスも超えた居場所が存在している。

思い返してみると、僕が打楽器に出会ったのもそのような場所であった。朝7時30分、小学校の音楽室。授業の前のその部屋は凛としていて、まだ何の音にも満ちていない、澄んだ空気がそこにはあった。そんな中で、手探りにドラムを稽古することが、新鮮で嬉しかった。教室の机以外の場所を与えられたような気がしたのである。その後、中学校では音楽部に入った。その時の顧問の先生は、チェロを弾く、豊かな音楽性を持った先生だった。中学2年、ブルックナーという作曲家に出会い、そのことを伝えると先生は様々なことを教えてくれた。それはやはり、部活動の中の、ちょっとした余白の時間だった。そういう時でもないと、先生と気軽に話をすることはできなかった。それくらい、先生たちはいつも忙しかった。中学3年、その先生は「本気で打楽器をやりたいのなら、先生を紹介するから、真剣に向き合ってみるのはどうか。」と強く進言された。それも、土曜日の部活動が終わった後、僕だけを呼び止め、真剣な眼差しでおっしゃってくださったのだった。授業のない土曜日の静かな学校だったからこそ、そんな話ができたのだと思う。

今こうして、僕が音楽家として立っていられているのは、ある日の学校の、澄んだ余白の積み重ねだった。月日は流れて、あの時の先生くらいの年齢になったいま、僕は千代田区立九段小学校「九段Planets」というバンドと共に歩んで4年目となる。

九段Planetsと共に






會田瑞樹【アイタ ミズキ】
1988年、宮城県仙台市に生まれる。幼少よりヴァイオリンを照井勢子に師事。 12歳で打楽器奏者を志し、佐々木祥、星律子、有賀誠門、藤本隆文に師事。独学で作曲を始め、14歳で処女作となる打楽器合奏曲《星の流れは大地を目指す》(2003)を発表。以降、作曲は独学。宮城県仙台第二高等学校を経て武蔵野音楽大学において吉原すみれ、神谷百子に師事。2014年武蔵野音楽大学大学院修士課程修了。
