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【CD&新譜紹介】「究極の吹奏楽~小編成コンクールvol.2」

秋山紀夫のバンド指導ヒント

ロケットミュージックから4月8日にCD&楽譜『究極の吹奏楽~小編成コンクールvol.2』が同時発売されました。

小編成バンドで良い曲をお探しの方、その答えがここにあります!CD&楽譜『究極の吹奏楽~小編成コンクール』、「小編成バンド」向きの新しい曲を集めたこのCD&楽譜がその答えです。

昨年のVol.1に続いて、今年も発売されたこのシリーズは、いつものようにいくつかの特徴をもってます。それらは;

1.若手中心の優秀な作曲家を動員してすぐれた作品となっていること。
2.小編成バンドを対象としていても技術的に妥協せず演奏し応えのある作品であること。
3.表題と内容がうまく一致していて、理解しやすく、かつ聴衆にもアピールできること。
4.模範演奏のCD付きで、かつスコアには各作曲者から曲の解説が「赤字」で記入されていること。
5.演奏時間がいずれも7〜8分程度で、コンクール自由曲として短すぎず適当であること。グレードはいずれも3.5〜5程度。

などが挙げられます。

とにかくまずCDを聴いて欲しいです。聴いたら楽譜を見たくなり、楽譜を見たら演奏したくなるでしょう。

CD『究極の吹奏楽~小編成コンクールvol.2』
指揮=佐藤正人 演奏=シンフォニックウインドオーケストラ21
発売日:平成27年4月8日
レーベル:ロケットミュージック
品番:XQLA-1005
価格:2,800円(税込)

究極の吹奏楽~小編成コンクールvol.2
  1. ヨハネス・ファンタジア(作曲:坂井貴祐)
  2. エルトゥールル号の記憶 - 太陽と新月の絆 -(作曲:清水大輔)
  3. アンティドトゥム・タラントゥレー(作曲:高橋宏樹)
  4. Have a Good Flight!(作曲:三浦秀秋)
  5. 飛翔 - 風速9.7m/秒 - (作曲:鹿野草平)
  6. 星空の物語(作曲:江原大介)
  7. ストロベリーフィールズの薔薇 - イマジンへの憧憬 -(作曲:天野正道)


収録曲のタイトルの意味などについては、CDの解説やスコアの表紙を参考にしていただくこととし、ここでは、各曲の印象をできるだけ簡単に紹介します。

ヨハネス・ファンタジア(作曲:坂井貴祐)

ヨハネス・ファンタジア(作曲:坂井貴祐)

 序奏は木管のざわめきの中、ミュートを付けたトラペットのソロで開始され、次第に他の楽器が加わって高まっていき速い主部に入ります。ヨハネスは、作曲家ヨハネス・ブラームスのことで、その旋律が用いられているので、格調高い木管と金管が対比的に表れます。ホルンを中心とする第2主題の後、テンポを緩め中間部に入り、ここではフルートとトランペットの旋律が目立ちます。次のクラリネット、ホルン、ユーフォニアム、テューバのコラール風なバランスも大切です。再びテンポを速め3部形式を形作り終わります。木管に16分音符の動き、金管にシンコペーションのリズム形が出てきますが難しくはありません。





エルトゥールル号の記憶 - 太陽と新月の絆 -(作曲:清水大輔)

エルトゥールル号の記憶 - 太陽と新月の絆 -(作曲:清水大輔)

 スコアのタイトルはこれだけで分かりにくいですが、CDのタイトルは具体的です。1890年の和歌山県沖で遭難したトルコ船の物語。その情景描写が多いですが、作曲者は「各人が想像して演奏してほしい」と言っています。低音楽器からゆっくりと開始される穏やかな雰囲気の序奏。盛り上がりとひそやかさも十分です。次の主部はトルコの軍楽隊のマーチ。短く静かな航海が描かれ、遭難とゆっくりした部分では漁民の親切が描かれています。そして音楽は温かみを増し、最後に日本とトルコの親善が高らかに歌い上げられ静かに終わります。途中にアルト・サックスの短いソロがあり、ピアノもハープのように使われ大切です。





アンティドトゥム・タラントゥレー(作曲:高橋宏樹)

アンティドトゥム・タラントゥレー(作曲:高橋宏樹)

 イタリアのタランテラ舞曲による曲で、前後にオリジナルの旋律を配し、間にいくつかのタランテラを取り入れた曲です。木管により静かに開始されます。トムが舞曲のリズムを導き出し、古いルネッサンス頃の感じの舞曲が現れ、ユーフォニアムが祈りに似たソロを聴かせニ番目の古典的な舞曲となっていきます。そして打楽器がテンポを速め、ナポリ風な第三番目の速い舞曲を提示しテンポを速めてゆきます。そしてゆっくりとしたオリジナルの旋律が再現されて曲を閉じます。





Have a Good Flight!(作曲:三浦秀秋)

Have a Good Flight!(作曲:三浦秀秋)

 作曲者は「空港の風景、離陸、広がる視界、乱気流、着陸」の飛行機の旅を描いた、と言っています。曲は木管のリズムで軽快に開始され、金管が楽しげに歌いだします。木管を中心とするなだらかな旋律に続きトロンボーンも歌います。中間部でゆっくりし、しばし安定した飛行となります。おおらかなメロディーが続いていきます。再びブザーが鳴りますが、乱気流に入ったらしいです。しばらくして再び安定した飛行となり、無事着陸して曲を閉じます。初めの方で一箇所、木管、ホルン、トランペットが息だけを吹き込んで風の音を出すところがありますが、ほかには特別なソロや楽器は使われていません。





飛翔 - 風速9.7m/秒 - (作曲:鹿野草平)

飛翔 - 風速9.7m/秒 - (作曲:鹿野草平)

 パイロットが初めての単独飛行に挑む様子・気持ちを描いた曲です。序奏を持つ3部形式。ゆっくりした序奏の中に何回か速い部分が挿入され、気分の不安定を描いています。速い主部は4分の3、4分の2拍子が目まぐるしく変わり、時々4分の4拍子も混じります。中間部は4分の3拍子で木管から歌いだされ、トランペットやホルンに移ります。再び速い主部に戻り、最後のコーダで一度テンポを緩めますが速く一気に終わります。





星空の物語(作曲:江原大介)

星空の物語(作曲:江原大介)

 緩・急・緩の3部形式の曲。ゆっくりした第1部はロマンチックな美しい旋律が続きます。速い中間部はシンコペーションのリズムに乗ってトランペットから始まりいろいろな楽器が歌っていきます。中間部も小3部形式。再びゆっくりした主部に戻り、堂々と終わります。特別なソロや楽器は使われません。





ストロベリーフィールズの薔薇 - イマジンへの憧憬 -(作曲:天野正道)

ストロベリーフィールズの薔薇 - イマジンへの憧憬 -(作曲:天野正道)

 「イマジン」は有名なジョン・レノンの歌で、初めの部分の歌詞は『想像してごらん。天国なんてどこにもない。僕たちの上にはただ空があるだけ』とはじまります。この吹奏楽曲は『9月11日のニューヨークのテロ事件を題材にした打楽器8重奏曲を作曲してほしい』という委嘱を受けて、初めは打楽器8重奏として作曲したとのこと。短く激しい序奏は低音楽器と打楽器に導かれてはじまります。打楽器8重奏が原曲だけあって、打楽器は種類と人数が必要です。主部は不気味に打楽器を中心に構成され、木管も加わっていきます。ヴァイブの響きも大切。しだいにリズムが細かくなり、木管の動きが複雑になります。激しく一度止まりますが、再び不気味な音楽は続きます。突然はげしく曲が変わり、混乱が描かれ、テンポを速めて次の部分に入ります。打楽器による16秒間のアドリブの後、悲劇を悼む讃歌の部分となり、静かに消えてゆきます。大変印象深い作品です。






秋山紀夫【あきやま・としお】 秋山紀夫
 前ソニー吹奏楽団常任指揮者。現おおみや市民吹奏楽団音楽ディレクター。(社)日本吹奏楽指導者協会名誉会長、(社)全日本吹奏楽連盟名誉会員、アジア・パシフィック吹奏楽指導者協会名誉会長、WASBE(世界吹奏楽会議)名誉会員、浜松市音楽文化名誉顧問、アメリカン・バンド・マスターズ・アソシエーション名誉会員。ソニー吹奏楽団名誉指揮者。

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