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「日本バンドクリニック50周年と米国海兵隊軍楽隊の来日」その3

秋山紀夫のバンド指導ヒント

「2019年5月;米国海兵隊バンドを迎えて」

 こうして、ジェイソン・フェッティグ大佐指揮の米国海兵隊軍楽隊78名は2019年5月12日(日)にワシントンを出発し、翌13日(月)に日本に到着。品川の元パシフィック・ホテル、現京急EXホテル品川にチェックインした。
 私は歓迎のご挨拶にホテルに伺いたかったが、この13日は、前号で紹介したように、家内が右膝蓋骨にひびが入り入院中で、しかも最初に入院した病院のリハビリのテンポが生ぬるく回復が遅いため、東京渋谷初台のリハビリ専門の病院に転院することになった。ちょうどその転院の日が13日で、来日と重なってしまい軍楽隊どころではなく、駆け回っていたため、当日も次の14日にも隊長歓迎に出かけられる余裕は全くなかった。
 こうして来日3日目の15日夕刻の横浜市みなとみらいホールでの来日初めての演奏会を迎えることとなってしまった。

 横浜の演奏会については、話を少し戻さねばならない。
 クリニック委員会では海兵隊バンドの演奏会をクリニック会場の浜松市以外で、何処で何回セットするかで、大変苦心されたと考えられる。東京ももちろん候補に上ったろうが、会場確保、主催者探しが難しく、たまたまクリニック委員長の小澤俊朗先生が横浜在住で、しかも横浜には「ブラス・クルーズ」という委員会組織があり、すでに毎年吹奏楽演奏会を開催していてバンドとのつながりもあり観客の動員力もあるため、この「ブラス・クルーズ」の組織に依頼して来日第1回の演奏会を企画していた。また他に2か所で東京や大阪から離れた場所の会場として、主催に積極的だった金沢市と、海兵隊の日本駐留基地のある岩国市がそれぞれ5月16日と19日に設定されていった

日程を並べると;
5月15日(水)横浜みなとみらいホール 18:30開演
  16日(木)金沢市北陸電力会館・本多の森ホール 19時開演
  17日(金)浜松市アクトシティ大ホール
  18日(土)同上
  19日(日)シンフォニア岩国コンサートホール 14時開演
  20日(月)帰国

 私は金沢と岩国の会場には伺えなかったが、第1回目の横浜と第3回目の浜松の演奏会には出席できたので、今回は横浜会場の演奏会の模様を紹介しよう。
 ブラス・クルーズではプログラム掲載のため多くの方々にいろいろな角度からの寄稿をいただいたが、私も米国海兵隊軍楽隊の紹介記事を寄稿していたので、 幸い次女と共に招待していただけた。おかげで楽屋に2人で隊長に挨拶に伺うことができ、副隊長が案内してくれた。ブラス・クルーズでは、単に海兵隊バンドの演奏を紹介するだけでなく、日本の陸上中央音楽隊との交流演奏会にしたい企画だったようで、多彩なプログラムとなった。
 まず定刻18時30分、創価ルネッサンスバンガードの華麗なファンファーレが「日本国マーチングバンド代表」として式典演奏を行い、続いて開会式として横浜市長をはじめ数人の挨拶が丁度30分続いた。
 これは、ワシントン海兵隊軍楽隊の演奏を聴きたいために参加していた聴衆にとってはかなり長く、演奏開始が待ちどうしかったに違いない。19時から陸上自衛隊中央音楽隊が「日本国代表演奏」と銘うって次の4曲を演奏。約40分。

1. 雅の鐘 ジョン・ウイリアムス作曲
2. 行進曲「デュプロマ(外交官)」 スーザ作曲 ゲスト指揮:フェティッグ大佐
3. ソプラノと吹奏楽の為の万葉賛歌 櫛田胅之扶作曲
4. 交響曲第5番「フェニックス」Op.110 ジェームス・バーンズ作曲
(この曲のファンファーレの部分は海兵隊バンドの金管セクションが共演)
次に20時からお待ちかねの米国海兵隊軍楽隊が、サラ・シェフィールド一等軍曹の司会で次の7曲を演奏。

1. ファンファーレ「フォー・ザ・プレジデンツ・オウン」 ジョン・ウイリアムズ作曲
2. 「イロア・イロア」 ケヴィン・ヴァルチック作曲
(現代音楽でこのバンドの優れた面を聴かせた)
3.「春の日の花と輝く」 マンディア作曲/ハウイー編曲
(ユーフォニアム独奏;マーク・ジェンキンス上級曹長の伸びのある柔らかい音が印象的)
《アンコール;ロンドンデリーの歌》
4. 新・祝典行進曲 團 伊玖磨作曲 ゲスト指揮:樋口孝博、陸上中音隊長
5.「アイ・ガット・リズム」 ガーシュウイン作曲
(メゾ・ソプラノ独唱シェフィールド軍曹)
《アンコール;歌劇「ポギーとベス」より「サマー・タイム」》
 (編曲も歌も最高)
6. 吹奏楽の為の交響詩「ぐるりよざ」より第 3楽章「祭り」 伊藤康英作曲
(この曲の持つ優れた音楽的な面を充分に表現した感動的な演奏)
7. 行進曲「星条旗よ永遠なれ」 スーザ作曲
《アンコール;行進曲「忠誠」スーザ作曲と特別編曲の「ヤンキー・ドゥードゥル」》
以上で約40分。その後休憩20分(その間合同演奏のステージ・セッティング)。

21時から海兵隊軍楽隊と陸上中音の合同演奏
1. 祝典序曲 ショスタコーヴィッチ作曲 指揮:ライアン・ノーリン大尉
2. 「輝く日への前奏曲」 後藤洋作曲 指揮:樋口孝博中音隊長
3. 行進曲「海を越える握手」 スーザ作曲 指揮:フェティッグ隊長
激しいアンコールが続いたが、もう時間がすでに21時30分に近く、名残惜しく終演。
大宮までの帰宅の足が心配されたが、幸い大宮の市民バンドのメンバーの車があり、高速を飛ばして、なんと1時間で帰宅できた。帰りの車中では、今夜の演奏会の話題で途切れることがなかった。


(横浜などの演奏会で司会をし、自分自身もメッツオソプラノの歌手として演奏に加わった、サラ・シェフィールド一等軍曹)


(ユーフォニアム奏者のマーク・ジェンキンス上級曹長)

(続;以下次号)

秋山紀夫【あきやま・としお】 秋山紀夫
 前ソニー吹奏楽団常任指揮者。現おおみや市民吹奏楽団音楽ディレクター。(社)日本吹奏楽指導者協会名誉会長、(社)全日本吹奏楽連盟名誉会員、アジア・パシフィック吹奏楽指導者協会名誉会長、WASBE(世界吹奏楽会議)名誉会員、浜松市音楽文化名誉顧問、アメリカン・バンド・マスターズ・アソシエーション名誉会員。ソニー吹奏楽団名誉指揮者。

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