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アルフレッド・リードの生涯 その2

秋山紀夫のバンド指導ヒント
(その1より続き)

《日本やアジアでの活躍(1993〜2005)》
リードの名声は日本でも1965年の吹奏楽コンクール課題曲に彼の「シンフォニック・プレリュード」が取り上げられました。さらに1970年には「音楽祭のプレリュード」も課題曲となり、ますます人気が高まり、その他の多くの曲も自由曲として演奏されるようになりました。
こうした人気の高まりの中で、1981年3月東京佼成ウインドオーケストラの招きで初来日が実現し、それ以来リードは日本中に知られるようになりました。
その後リードはほとんど毎年のように日本を訪れていましたが、マイアミ大学退職後の1994年からは洗足学園音楽大学の客員教授として、日本での滞在時間が長くなりました。その間、洗足学園音楽大学シンフォニックウィンドオーケストラとはヨーロッパ演奏旅行を成功させ、1995年には浜松市で開催された世界吹奏楽協会(WASBE)世界大会にも共に出演しました。
2000年12月には、フレデリック・フェネルとともに台湾を訪問し、韓国済州島には、1997年8月以来、2001年と2003年の3回訪問し、チェジュウ・ウインド・アンサンブルの指揮にあたりました。
そして、84歳の2005年9月17日、多臓器不全のためフロリダの自宅で亡くなり、マジョリー夫人も後を追うように、2007年12月に亡くなりました。


【アレフレッド・リード追悼演奏会】
リードの追悼演奏会については、特に知っておいてほしいことがあります。
マイアミ大学では、1965年から1980年までウインド・アンサンブルの指揮者を務めたフレデリック・フェネルが2004年12月7日に亡くなったときには、追悼演奏会は実施されませんでしたが、リードが2005年9月17日に亡くなると、4ヶ月後の翌年2006年1月17日に追悼演奏会が開催されました。
その時のプログラムは次の通りです。

「Alfred Reed Memorial Concert」
主催;グレーター・マイアミ・シンフォニック・バンド(マイアミの伝統ある市民バンド)
会場;マイアミ大学ガスマン・ホール 午後8時より
ミュージック・ディレクター;グレイ・D・グリーン
指揮;ロバート・ロングフィールド
ゲスト指揮者; クラーク・マカリスター(カルマス出版社副社長)、アーノルド・ゲイブリエル大佐

プログラム;
1. アメリカ国歌
2. 音楽祭のプレリュード
3. 子どもの組曲 Ⅰ.きよこの子守歌、Ⅱ.遊んでいるきよこ(でんでん太鼓)
Alto Sax solo;ノリス・シエルト
4. クリアー・トラック・ポルカ(エドワード・シュトラウス/リード編曲)
5. ミュージック・イン・ジ・エアー
グスト指揮;クラーク・マカリスター
6. ロシアのクリスマス音楽 
ゲスト指揮;アーナルド・ゲイブリエル大佐
(休憩)
7. オールド・エンド・ニュー
8. マリンバと吹奏楽のための小協奏曲より Ⅲ.トッカータ
Marimba solo;ジェニファー・ミラー
9. ラデツキー行進曲(ヨハン・シュトラウス1世/リード編)
10. 魔法の島
ゲスト指揮;クラーク・マカリスター
11. エル・カミーノ・レアル


以上いずれもリードの作曲または編曲で、3曲目の「子どもの組曲」は高山市民吹奏楽団の首席アルト・サックス奏者岩本伸一氏の委嘱で2000年に作曲された曲です。

次いでリードが亡くなって一年目の2006年9月17日日曜日に、マイアミ大学では、正式な追悼演奏会を開催されることとなり、私も招かれました。
15日にリハーサルがあり、私は大学のオーケストラを指揮して、クラーク・マカリスターが管弦楽に編曲した「ロシアのクリスマス音楽」を指揮することになりました。17日当日は午後7時30分から大学のガスマン・ホールで次のようなプログラムで演奏会が開かれました。

プログラム;
《追悼の言葉 マイアミ大学音楽学部長 ウイリアム・ヒップ》
1. アレルヤ!ラウダムス・テ
演奏;フロスト・シンフォニック・ウインズ
ゲスト指揮;クラーク・マカリスター
《追悼の言葉 マイアミ大学音楽産業学科 ジェームス・プログリス科長》
2. オセロより Ⅳ.廷臣たちの入場、Ⅴ.デスデモナの死、終曲  ゲスト指揮;コンスタンス・ウエルドン
《追悼の言葉 コネチカット大学音楽学部長 ケネス・フックス》
3. 秋のリズム(管楽五重奏曲)(ケネス・フックス作曲)
《追悼の言葉 クラーク・マカリスター》
4. 春の猟犬
ゲスト指揮;元米国空軍軍楽隊長ロウエル・グレイアム大佐
《追悼の挨拶 秋山紀夫》
5. ロシアのクリスマス音楽(クラーク・マカリスター編曲)
(オーケストラ用に編曲した楽譜で、マイアミ大学管弦楽団の演奏)
ゲスト指揮;秋山紀夫

※注;クラーク・マカリスターとケネス・フックスはマイアミ大学の出身でともにリードの教え子。4曲目の「春の猟犬」はイリノイ大学バンド・ディレクター、ジェイムス・キーンが指揮する予定でしたが、都合でグレイアム大佐に変更となりました。


【リードが日本の吹奏楽界に残してくれたもの】
●作品;リードの出版された約100曲あまりの吹奏楽曲のうち、日本の個人や学校、団体から委嘱されて作曲した曲は22曲に及び、全作品の約4分の1近くにあたり、特に1989年以降に多く、これは日本の吹奏楽界にとって大きな遺産となっています。

●洗足学園音楽大学での教育活動;1994年から亡くなるまで客員教授として、シンフォニックウィンドオーケストラの指導・指揮にあたり、同シンフォニックウィンドオーケストラを指揮して1997年にはオーストリア、シュラットミンクでの第8回世界吹奏楽協会(WASBE)大会に参加、洗足学園音楽大学をヨーロッパに紹介しました。さらに2000年にはシカゴのミッドウエスト・バンド・クリニックにも出演し、洗足学園音楽大学、ひいては日本の吹奏楽を世界に紹介してくれました。
●また1998年に同じくシュラットミンクでのミッド・ヨーロッパ・バンド・クリニックに出演した埼玉県・伊奈学園総合高等学校吹奏楽部のゲスト指揮を。さらに2001年に同クリニックで愛知県・光が丘女子高等学校吹奏楽部の指揮にあたり、日本の吹奏楽のヨーロッパへの紹介に力を貸してくれました。その他にも日本国内、特に各地の市民バンドの客演指揮を快く引き受けて、その技術や音楽表現の向上に尽くしてくれた功績も大きいです。フェネルの場合は東京佼成ウインドオーケストラがゲストとしての参加を制限したこともあって、リードよりも客演指揮は少なかった。

●リードの客演は日本だけでなく、台湾や韓国にも及び、特に韓国の済州島は3回にわたって彼を招き、現在でも慕われていて、2014年には追悼演奏会も催しています。

このようにリードが日本やアジア各国に残した功績は大きく、決して忘れることはできません。 

 

秋山紀夫【あきやま・としお】 秋山紀夫
 前ソニー吹奏楽団常任指揮者。現おおみや市民吹奏楽団音楽ディレクター。(社)日本吹奏楽指導者協会名誉会長、(社)全日本吹奏楽連盟名誉会員、アジア・パシフィック吹奏楽指導者協会名誉会長、WASBE(世界吹奏楽会議)名誉会員、浜松市音楽文化名誉顧問、アメリカン・バンド・マスターズ・アソシエーション名誉会員。ソニー吹奏楽団名誉指揮者。

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