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KIN48「旅立ちの日に」(リコーダー、合唱付き)
《コンパクトな編成。吹奏楽にも対応。歌の伴奏だけでなく在校生のリコーダーも加えられる》
解説:座間 吉弘 (バンドディレクター)

 2024年5月、浜松で開催されたJAPAN BAND CLINIC小学校レパートリー講座に参加の指導者を対象に実施したアンケート結果をはじめ、全国各地の指導者から最も出版要望の多かった「旅立ちの日に」がこのたびロケットミュージック社「小学生のための金管バンド」シリーズから出版される運びとなり、今後各地の学校現場で演奏され、スクールバンドの存在価値を学校内外に向けて大いにアピールしてくれるアイテムとなる事を期待しています…。
 この楽譜シリーズは小学生の演奏技術を考慮したやさしいアレンジで編成はコルネットとトロンボーン各2パート、アルトホルン・ユーフォニアム・バス各1パート+ドラムセットで計8パートの「金管バンド」を基本に制作されている点が特徴にあげられます。オプションとして「E♭コルネット」、「フリューゲルホルン」、「バリトン」が加えられ本格的な金管バンド編成にも対応できるだけでなく、木管楽器各パートや「in Fホルン」も加えられ、吹奏楽までオールマイティーで対応可能に制作されています。加えて「金管初心者パート」も準備されており、小学校バンドの実情に合わせた制作コンセプトが心憎い限りです…。(笑)
 
 この曲では更にオプションで「リコーダー・パート」が加えられ、卒業生による合唱と在校生によるリコーダー合奏をバンド伴奏によって実現できる内容を備えている点がとても素晴らしい!。コンサートだけでなく、一般児童と共に音楽を通して感動を共有する「学校の音楽活動」としての位置づけが可能となる楽曲です。「リコーダー・パート」は在校生の一般児童(5年生以下)の標準的な演奏技能で無理なく取り組めるよう、対旋律的な伸ばしの音を中心に「ソ・ラ・♭シ・ド・レ」の範囲で低音域やサミング音域は避けられ、歌のキィは〔B♭〕でありながら運指の難しい「♭ミ」の音使用も回避されています。
同社の「金管バンド」シリーズは通常、アメリカのグレード基準「2」の範囲内で厳格に制作されていますが、拙者としてはこのアレンジに限り原曲の歌唱パートを尊重してメロディーに16分音符の使用がみられるため、グレードを「2+」と表記したいところですが、メロディーは既に子供たちに広く認知されているため技術的には問題なく取り組む事が出来るでしょう…。
合唱パートは小学生の実情に合わせ同声二部となっていますが、和声的に支障のない混声三部合唱の伴奏にも対応できるため、高度な合唱活動や中学校での使用にも充分活用出来るでしょう。 

卒業シーズンのスクールバンドは最上級生が引退し、全体の演奏技術が一番低下する時期でもあるため、今村愛紀さんの手によるこのアレンジは新メンバーで無理なく取り組める作品としてお薦めできる一曲です!。

《演奏上の工夫・ポイント》
 バンドで合唱の伴奏を行なう場合には歌唱の加わる場面で管楽器のメロディー音量が強すぎると大切な歌詞の「子音」が消されて台無しになってしまうため注意しましょう。歌詞の「子音」が聴き取れる音量バランスが大切です。解決策としてメロディー部分の演奏人員を削減し、休むメンバーには部分的に歌唱を担当してもらうと良い補強にもなります。 [A]からのコルネットの旋律はスラーを尊重し、フレーズの最初と同音連打以外は舌を突かないよう注意を払い4小節ごとのフレーズのまとまりを表現できると良いでしょう。第2小節目からのユーフォニアムの対旋律は全音符に向かう起伏を帯びたフレーズ表現を意識しましょう。全体を通してバス進行はメロディー同様の4小節単位の流れやまとまりを意識して表現しましょう。 [B]は演奏人員に余裕のある場合、オプションの〔Baritone〕パート(混声三部の男声パート)の動きを加えると面白いでしょう。合唱伴奏の場合、歌の途切れる間奏 [D]のトロンボーン・ユーフォニアムのメロディーはボリュームアップで積極的に。 [E] [F]のメロディーは可能であれば4小節ワン・ブレスで演奏し、フレーズづくりを意識しましょう。全体に前奏・間奏・後奏は大きめの音量表現でゴージャスに仕上げると良いでしょう。

サンプルスコア

金管楽器音域表

リコーダー音域

合唱音域


解説:座間 吉弘 (バンドディレクター)


東京都出身。尚美学園ディプロマ科修了。トロンボ―ンを松本煕、吹奏楽指導法を小澤俊朗、室内楽を中川良平の諸氏に師事。
 トロンボーン奏者・レスナーとしての活動のほか、バンドディレクターとして数多くのスクールバンドをサポート。
特に小学校バンド、初級バンドの育成に力を注ぎ、初級バンドのレパートリー研究・普及活動を行なっている。
2007・8年度全日本小学校管楽器教育研究会「管楽器指導者のための特別講座」に於いて管楽器指導法、2009/第40回から現在・2024/第54回に至るまで継続して日本吹奏楽指導者クリニックにてレパートリー講座を担当している。


編曲:今村愛紀
 
埼玉県立伊奈学園総合高等学校、帝京大学文学部卒業。作曲を清水篤氏に師事。
第2回日本管打・吹奏楽学会作曲賞にて「組曲第1番」が佳作を受賞。
21世紀の吹奏楽 第19回“響宴“にて「Luna」が入選。
21世紀の吹奏楽 第21回“響宴“にて「Juvenile」が入選。
吹奏楽に限らず、オーケストラや弦楽四重奏、器楽合奏などの編曲も行い、出版されている作品数は150を超える(編曲作品を含める)。
作編曲家として活動するほか、吹奏楽指導、楽譜浄書、指揮等も精力的に行う。