| 作曲者 | 會田瑞樹(アイタ・ミズキ) |
| シリーズ | ソロ(木管,金管,打楽器) |
| 編成概要 | スネア・ドラム |
| 解説 | 「その音は人の魂をゆりうごかして、悲しめる者を喜ばせ、疑ふものを信ぜしめ、憂ふものを笑わせる音…」『ヤパン・マルスの作曲家』/今東光著 小太鼓の歴史を紐解けば、日本に伝来されたのは幕末の頃。開国間近の日本は揺れ動いていた。音楽による国威高揚を取り入れるべく、オランダ人二等水夫ヘフタイに師事するべく、《馬鹿囃子》が得意だった関口鉄之助、白井大八が勇んで向かっていった。1865年に刊行された『歩操新式』第3巻後半は「鼓譜」となっており、関口光嘉門人、犬飼清信が編集を担当。その中に、《ヤッパンマルス》は収められている。そしてここから、戊辰戦争をはじめとする内紛の中で、多くの若い命が散っていき、陸軍、海軍による軍楽隊の創立、ジンタなどの大衆芸能、見世物小屋への分派、華やかなる大正、そして無残にも多くの命が失われた戦争を経て、今ここにヤッパンマルスの譜面が僕の手元にある。 音楽学者奥中康人氏による復元も参考にしつつ、しかし、僕の中で全く異なる風景が見えた。太鼓を打つという喜び、友と共に奏で、笑いあった日々。そのような明朗な息吹をそこに感じたのである。したがって本作品は、正確な復元という点は一切なく、むしろ21世紀の世界中の打楽器奏者のレパートリーとなるべく、再作曲を手がけたものである。随所に見られる「Yap-Pan !」の楽しい主題、FlamやRaff(ルーディメントの一種)が口三味線の音からそう名付けられたように、「ヤッパン主題」を大いに楽しんでもらいたいと願った。 冒頭は、これまでに太鼓を奏で、そして戦地へと散っていった、すべての先輩打楽器奏者に対しての、心からの哀悼と深い敬意を込めた、葬送行進曲である。時間の都合による省略は可能であるが、できれば通奏してほしいと願う。 僕たちのもとに、小太鼓という宝物を授けてくださった、全ての先輩打楽器奏者に謹んでこの作品を献ずるものである。 ※小太鼓による、深く、少し闇を伴う、荘重な音色で奏でられることが望ましいです。スネアドラムの基礎を習得した上で演奏することがもっとも大事と考え、このようなシンプルな冒頭を置いています。「Yap-Pan!」というシンコペーションのリズムは奏者の任意でYap-Pan!と声を出しながら打つことも可能です。装飾音符の素早さ、打つ場所を変化させることで浮かび上がる音色の愉悦を楽しんでください。 |
| 解説2 | 〈會田瑞樹プロフィール〉 「音楽の可能性を拡げ続ける情熱の人」(野本洋介氏/バンドジャーナル2025年12月号) 會田瑞樹は2010年のデビュー以来、常に多角的に音楽を見つめ、行動に移している。打楽器、とりわけヴィブラフォンのためのレパートリーの拡大を求め多くの作曲家との協働を通し、300作品以上の初演を通し音楽の未来を見つめている。 作曲家としても打楽器作品のみならず、管弦楽、室内楽、歌曲と多岐にわたる創作活動を展開。演奏家の視座を持った「見通しの良い音楽」(北爪道夫氏)と評されるなど、その活動範囲はとどまることなく、近年は教育の面においてもその大胆な発想を活かした行動的な指導に定評がある。 1988年12月24日、宮城県仙台市生まれ。2010年、日本現代音楽協会主催“競楽?”第二位入賞と同時にデビュー以降、これまでに300作品以上の新作初演を手がけ「初演魔」の異名をとる打楽器/ヴィブラフォン奏者。2019年第10回JFC作曲賞入選、2021,2023年リトアニア聖クリストファー国際作曲コンクールLMIC特別賞を受賞するなど作曲家としても広範に活動。アルバム「いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情」は年間最優秀ディスクとなる第59回レコードアカデミー賞を獲得。そのほかサライ推薦はじめ各紙より絶賛を受けた。現代作品の魅力を多彩に紹介した成果により令和2年度大阪文化祭奨励賞、令和3年度宮城県芸術選奨新人賞受賞。2024年、第21回イタリア国際打楽器コンクールヴィブラフォンC部門最高位受賞。千代田区立九段小学校”九段planets“代表指導者、渋谷区立上原中学校吹奏楽部指導員を務めるなど、演奏、創作、教育と多面的にその音楽性を発揮し続けている。 |
| 編成 | スネアドラム(無伴奏) |
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