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Music People vol.67 迎 佳和

早稲田佐賀という吹奏楽部


 一歩ずつ前に進んできました。でも、特別なドラマはありません。そんな本校吹奏楽部のこれまでの話に、少しばかりおつきあいください。

 現在私は、早稲田大学の系属校である早稲田佐賀中学校・高等学校に勤務しています。九州に初めて設立された付属・系属の学校とあって、開校当初から多くの注目を浴びました。私はこの学校が開校した2010年に赴任し、早いもので今年12年目になります。

 赴任するまでに複数の県立学校や教育庁等を異動しながら教員生活を送ってきたのですが、早稲田佐賀中・高は初めての私立の中高一貫の進学校、それも開校に立ち会えるなんてめったにない経験。さすがに緊張しました。不安が大きかったのも正直な気持ちです。

 そして迎えた4月。吹奏楽部も開校と同時に創設でしたので、「一から作り上げる魅力を感じられる、頑張ろう!」という思いで臨みました。ところが、開校一年目ですので当然ながら1年生しかいないわけです。結局、最初は中1と高1がそれぞれ6名ずつの合わせて12名でスタート。中学生は高校生を先輩と呼び、3つも離れた中学生と2学年での活動。それまでの経験にない、ちょっと変わった感触だったのを覚えています。

 まず最初に困ったのは、「楽器がない…」ということ。開校に間に合わせるために4月に音楽室に届いたのは、授業に必要なピアノと机・椅子のみで、部活の備品は二の次でした。最低限必要な物の購入を学校にお願いしましたがなかなか上手くいかず、結局、他校から使わなくなった楽器を多数借りて練習することにしました。


 さあ、練習を始めよう!と思ったら次の問題…。まずは、楽器の組み立てから覚えないといけない生徒たちも多かったので、自力ではとても練習できません。何とか他校に合同練習をお願いしたり、来校いただける講師の先生方に来てもらったりなど、多くの協力を頂きました。学校では毎日、教則本と向かい合い、合同練習やレッスンで得たことを繰り返し練習。ようやく、少しずつ音が出始めるようになっていきました。

「放課後の学校に吹奏楽部の音が鳴り響く」という環境は、前任校では当たり前と感じていましたが、あらためて「こんなにも幸せなことなんだ」と実感したのと同時に、力を貸して頂いた他校の吹奏楽部の皆さんや講師の先生方に心から感謝の気持ちが湧いてきました。

 大隈重信候の理念を受け継ぐ建学の精神を基に文武両道を目指す本校の生徒にとって、限られたわずかな練習時間で演奏を完成させるのは容易ではありません。しかも初年度は1年生だけ。音が鳴り始めたとは言え、演奏力という点では非常に厳しいものがありました。音符を並べることもままなりません。


 しかし、当時の生徒たちはとにかく音楽が大好きで、楽器を握りしめ、喜々として練習に取り組みました。その中で、どうしたら練習の時間が確保できるか、どうしたら喜んでもらえる演奏ができるか、生徒たちは考え始めたのです。部活動のルールやスケジュールも全て自分たちで作成し、自ら考え、負荷をかけ、時間を大切に使う技を身につけ出しました。その結果、最初の年度はすべてが初めて立つステージだったにも関わらず、どの本番も堂々とした演奏を披露してくれるようになりました。自分たちで作った「早稲田スタイル」を貫いた証だと思いました。


 その後、2年目には中高それぞれでコンクールに出場することが叶い、3年目に初めての定期演奏会、そして、学校や地域行事・訪問演奏等の機会も増え、様々なコンテストでも多くの金賞を戴くことができるようになりました。今では年間の演奏活動も大変有意義なものとなっており、来年5月には第10回目の定期演奏会を開催する予定です。

 現在も、部員は中高合わせて22名ほどの小さなバンドです。大編成のバンドに比べると寂しい気もしますが、「少ない編成だからこそできる魅力を伝えたい!」を一番の目標に掲げ、生徒たちは開校時に先輩たちが築いた『早稲田スタイル』を伝統とし、それぞれの能力を最大限に発揮することを胸に誓いながら日々精力的に活動を続けています。

 そんな生徒たちに囲まれ、私は今でも吹奏楽の指導に楽しく関わらせてもらっています。今はコロナ禍のため外で演奏できる機会も随分と減りましたが、またいつか、本校吹奏楽部のサウンドをたくさんの方々に楽しんでいただけるよう、生徒たちもその日を楽しみに今日も楽器を吹いています。





迎 佳和【むかえ・よしかず】
早稲田佐賀中学校・高等学校
教頭(高等学校)
吹奏楽顧問(中学校・高等学校)

1件のコメント

迎君とは高校が同期で、次女が中学、高校と吹奏楽部をしていたので、ソロコン?かなんかのときに、うん10年ぶりにお目にかかりましたー。
そして、先日の高文連で、うちの4番目の娘が出場したので、観覧したのですが、迎くんの名前が、パンフレットに!
今は教頭先生されてるんですねー。
元気でご活躍で、なによりです。

中島ゆかり 2023年 3月 22日

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