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Music People Vol.77 下田和輝

私の作曲に対する姿勢

皆様こんにちは! 吹奏楽界を中心に活動させていただいている、作編曲家の下田和輝です。
これまでエッセイを書く機会がほとんど無かったので、今回は私の生い立ちや、作曲をするときに感じていることなどを中心に気ままに書いてみようと思います。エッセイというよりかはプロフィールをより細かく書いたような文章で、拙い文章ですがお付き合いいただけると幸いです。

私の描く音楽作品は、過去、とりわけ幼少期~青春時代の体験が基盤になっていると言っても過言ではありません。音楽が好きな父と在宅ピアノ講師の母のもとに生まれ、両親の影響で子供の頃から音楽をそれとなしに聞いていた幼少期。バロック~近代クラシック音楽から、T-SQUARE、カシオペア、シャカタク、PONTA BOX、などなど、スピードラーニングばりに様々なジャンルの音楽を聞いていたと思います。音楽はそんなに好きではなく、レゴブロックやプラレールに没頭する毎日でした。母にピアノ練習を勧められましたが、鍵盤は重いし発表会などで人前に出るのが大の苦手だったのでイヤイヤやらされていました。


そんな幼少期のある時、母が購入した一つのCDに出会いました。株式会社イトオンから出ている「星めぐりの歌」(宮沢賢治歌曲集)です。このCDを聴いて私は言葉で言い表せないほどのとてつもない感動を覚えました。そのCDは、単に宮沢賢治の作曲した歌とピアノ伴奏、というものではなく、生楽器やシンセサイザーを用いた壮大なオーケストラサウンドで作られていて、テンションノートを多用した色鮮やかなリハーモナイズが、ファンタジックな宮沢賢治の世界と非常にマッチしていました。また、シンプルな旋律をこんなにも壮大に作り変えることができるんだなというアレンジへの興味関心もあったのだと思います。(…と今では分析できますが、幼少の自分にとっては「なにこれ、すごい!!!!!」という感情だけだったと思いますが…笑)
とはいえそのCD以外の音楽にはあまり興味を抱いていなかったのですが、小学校3年生の夏に、岩手県を拠点に世界的に活動している「姫神」という音楽アーティストに出会いました。姫神は東北地方の民謡や民族音楽に影響を受けた楽曲が特徴ですが、上記の宮沢賢治歌曲集でも用いられた「シンセサイザー」を姫神でも中心的に用いており、興味関心から家にあったシンセサイザー(Roland D-10)でいじって遊ぶようになりました。簡単な作曲もこの頃から始め、「宮沢賢治」「姫神」の世界観に共通するような、ファンタジックで壮大な宇宙や自然の美しさ、平和思想を持ったものや人間の精神的な内面を描くような曲をポツリポツリと産み出していきました。私の故郷である岩手県の洋野町は美しい海や山に囲まれた自然豊かな場所で、今思えば幼少期に身近に感じていた大自然と「宮沢賢治」「姫神」の世界観とを重ね合わせていたのだと思います。大人になってから作曲した吹奏楽作品も、自然の美しさや平和思想を持ったものを題材にした作品が多いのは、やはり「宮沢賢治」「姫神」の影響が大きいのかもしれません。


それからは少しずつ音楽への興味が強くなりはじめ、小学校4年生には姉がやっていた影響で小学校の金管バンドクラブに入りました。金管バンドではコルネットを担当。管楽器、金管バンド、吹奏楽への興味もここから始まりました。
そのまま中学校でもトランペットを続けたいという思いから吹奏楽部に入部。ここで出会った吹奏楽作品が後の人生を大きく変えることになります。中学校2年生の時の吹奏楽コンクール自由曲はジェームズ・スウェアリンジェン作曲の「喜びの音楽を奏でて!」。この曲を演奏するのも楽しかったのですが、何より楽しかったのはフルスコアを分析することでした。「このパートはトランペットパートの自分が旋律を演奏しているときにこんなオブリガートを演奏していたのか…!」など、音源を聴きながらトランペット以外のパートを歌うことで音楽の作りを学んでいました。それからというもの、莫大な量の吹奏楽曲を浴びるように聴きあさり、その年から私は吹奏楽編成でも作曲をしてみたいと思うようになりました。作品を完成させてはその出来の悪さに反省し、少しずつ作曲技術を向上させていきました。初めて作曲した吹奏楽作品の音源は現存していますが、今聴き返すとツッコミどころ満載なのでお聴かせできるレベルではありません……笑
高校に進学しても吹奏楽部は続け、ユーフォニアムに転向したことで楽曲がどのように作られているかをより一層理解するのに役立ちました。部活から帰宅しては学校の勉強をせずに寝るまでひたすら音楽・作曲を楽しんでいた記憶があります。小さいパーツ(音符)から壮大なものを作り上げるという行為は、幼少期に好きだったレゴやプラレールにも共通するものがあり、作曲しているときが最も幸せな時間でした。


作曲をより深く学びたいという強い思いから、高校卒業後は東京に上京し尚美ミュージックカレッジ専門学校にて4年間作曲を学びました。尚美では多くの先生方のもとで専門的な知識を学ぶことができ、特に菊池幸夫先生、高橋伸哉先生、広瀬勇人先生には作曲・吹奏楽について本当に様々なことを教えて下さりました。在学中は吹奏楽のみならず、それ以外の分野(例えば、コンテンポラリーな音楽から映像音楽、CM音楽、ポピュラー音楽など)も学び、中学から続けていた浴びるように聴いていた吹奏楽に加えて、ジャンル問わずありとあらゆる音楽を聴いて作曲の勉強に励みました。ジョン・ウィリアムズ、コルンゴルト、ライヒ、ジョン・アダムズ、マイケル・トーキー、コープランド、ハワード・ハンソン、ヴォーン・ウィリアムズ、ウォルトン、アーノルド、フランク・ブリッジ、ジョン・フォウルズ、ラウタヴァーラ、ロン・ネルソン、エリック・ウィテカー、ジョン・マッキー、ティモシー・マー、ヨハン・デ・メイ、スティーヴン・ブライアント、クラウス・オガーマン、フォープレイ、インコグニート、リッピントンズ、ジェフ・ローバー、キース・ジャレット、パット・メセニー、テイク6、ジェイコブ・コリアー、ELP、エニグマ、ブライアン・イーノ、ハニャ・ラニ、オーラヴル・アルナルズ、喜多郎…どれほどのアーティストから影響を受けたか挙げたらキリがありません。
尚美卒業直前に受賞した「第5回 日本管打・吹奏楽学会作曲賞」をきっかけに、本格的に吹奏楽を中心とした作編曲活動を行うようになりました。周りの素晴らしい演奏家、出版社(勿論、ロケットミュージックさんもです!)や学校現場の先生方のご縁のおかげで、現在は吹奏楽界を中心に吹奏楽作品やソロ・アンサンブル作品などの作編曲を中心に活動させていただいています。
また、吹奏楽関係の作編曲の傍らDAW(DTM制作をするためのソフトウェア)やシンセサイザーを用いた楽曲制作も行っております。昨年からは11年間住んだ東京から北海道の利尻島に移住し、大好きな自然に触れながら利尻島をモチーフにした楽曲を作り続けています(2022年9月現在、8曲完成)。それらと並行して大規模な吹奏楽編成を用いた1時間ほどの作品も構想中です。いずれは協奏曲も書きたいです。願わくばCMや映画音楽にも携わりたいです。やりたいことがたくさんありすぎて困ります…笑


…こうして私自身の音楽の遍歴をたどると、私の作曲に対する姿勢は幼少期から現在まで一筋の道で成り立っているんだなと実感します。生まれてから30年経ちましたが、良いことも悪いこともありました。また人間には喜怒哀楽があるのと同じで、私の作る音楽作品も曲によって様々な表情を見せます。しかし、壮大な宇宙や自然の美しさ、平和思想を持ったものや人間の精神的な内面を描くという姿勢は、拙作一つ一つに一貫して言えるのではないかなと思います。
なぜここまで上記の姿勢にこだわるのか…やはり「宮沢賢治」「姫神」の影響は大きいですが、それと同等に現代の環境問題や争いの絶えない現代に一石を投じたいという思いがあるのかもしれません。地球という場を使わせてもらっている人間は、その恩恵を忘れてしまいがちです。一石を投じることにより、少しでもそのような意識を持つことでより良い地球の未来が見えてくるのでは…そんなことを考えながら、大好きな作曲という行為を通して表現をしています。
これからも変わらず自身の信念を貫き、様々な音楽作品を生み出していきたいですね。

 

 

 

 

下田和輝【しもだ・かずき】

1992年1月14日、岩手県洋野町生まれ。現在、北海道利尻島在住。
幼少のころからフュージョンやスムースジャズをはじめさまざまな音楽に触れ、小学校4年生から学校のクラブの金管バンドに所属。コルネットを担当。
洋野町立種市中学校では吹奏楽部に所属し、トランペットを、進学先の岩手県立久慈高校では吹奏楽部でユーフォニアムを担当。
中学生のころ、作曲に興味を持ち始める。
高校卒業後、作曲を一から学ぶため上京。
2014年3月、尚美ミュージックカレッジ専門学校音楽総合アカデミー学科作曲コース(4年制)を卒業。
作曲を菊池幸夫、高橋伸哉、広瀬勇人の各氏に師事。
2012年度のJuCuStage主催「学生作曲家選手権2013」において、「Voyage」が佳作を受賞。
2013年度のJuCuStage主催「第2回全国学生作曲選手権大会」において、サクソフォーン4重奏作品「Across the City」が優秀賞(2位)を受賞。
2013年度の「第5回 日本管打・吹奏楽学会作曲賞」において、吹奏楽作品「オータム・ファンタジー」が作曲賞(一位)を受賞。
2015年度の「第7回 日本管打・吹奏楽学会作曲賞」において、吹奏楽作品「夜明けの海岸」が本選ノミネート。
大江戸シンフォニックウィンドオーケストラ第3・4回定期演奏会作品公募入選。
「21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品『吹奏楽のためのファンファーレ「イン・トライアンフ」』が入選。
「21世紀の吹奏楽 第20回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品『DaJa ~南部地方盆唄「ナニャドヤラ」による~』が入選。
「21世紀の吹奏楽 第21回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品『吹奏楽のための序曲「チアーズ!」』が入選。
「21世紀の吹奏楽 第22回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品「Water Heart ~一筋の流れに導かれて~」が入選。
平成29年度 第50回JBA「下谷賞」受賞。
福井県立武生商業高等学校吹奏楽部や東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部などの全日本吹奏楽コンクール全国大会常連校への楽曲提供をはじめ、東京吹奏楽団やWISH Wind Orchestraなどプロ吹奏楽団への作編曲作品提供や日本各地の学校吹奏楽部・一般吹奏楽団の委嘱作品作曲など、吹奏楽の作曲・編曲を中心に活動をする傍ら、吹奏楽コンクールの審査員なども務め幅広く活動をしている。
また、作編曲作品はCD収録も多数で、楽譜はロケットミュージックやブレーンミュージック、フォスターミュージック、CAFUA、ウィンズスコア等の楽譜出版社から出版・レンタルされている。 下田和輝 公式ウェブサイト → Shimoda-Kazuki.net

 

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