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Music People vol.36 三田純子

「音楽」を、子どもたちにとっての人生の糧となるようにしていきたい

 小学生の時、音楽の授業と先生が大好きでした。

 ある日フルートの鑑賞の授業があり、その先生が『ペールギュント』の『朝』のフルートソロを吹いてくれました。その音色は今でも覚えていて、決して上手なものではありませんでしたが、児童に聴かせるために一生懸命練習したであろう先生の真心が伝わってくるものでした。その時を境に私は「その仕事がしたい!」と強く思うようになりました。


 中学・高校ではなく、小学校の音楽専科で働くためには、一般的に国立の教育学部を卒業する必要があります。そこでは心理学、教育学、そして小学校全教科の勉強をしつつ、和声・音楽史・対位法・実技など多様な教科の単位も取らなければいけませんでした。 

 大学に入るまで私はフルートとピアノを演奏していました。しかし高校生の時から和声に興味を持つようになった私は、大学では作曲を専攻することにしました。実は在学中に小学校教師以外の作曲の道を考えたこともありました。しかし小学校で編曲や作曲をして、子どもたちと合奏・合唱したいという当初の願いを思い返し、それを実現することに努めました。

 念願の教職についてからも、音楽専科で働くためには学級担任の経験(全教科)を経なければいけませんでした。多くの子どもたちの実態をつかみ、配慮し、支援して、生活の指導もし、学級担任の想いにも沿っていかなければいけません(現在15クラスの音楽を担当しています)。『よい音楽』とは矛盾するようなこともたくさん出てきます。音楽以外にも様々な能力が必要なので、今でも苦労しています。しかし、この職につける専門家は大変少ないので、重宝されているとも感じています。本当にありがたいことです。


 辛い時はあっても「音楽の楽しさを伝えたい」という気持ちが強いから続けてくることができました。子どもたちには技術も身につけさせたいですが、まずは「こういう演奏がしたい」「いい曲だから自分でも表現したい」という『意欲づけ』が必要です。なので、私は『子どもを惹きつける曲』をいつも探しています。ついつい歌謡曲には遅れをとってしまいますが、なるべく世の中にアンテナを張り巡らし、子どもたちが「歌いたい、演奏したい」という気持ちを持てるようにと考えています。

 私はあまり難しい編曲をしません。それでも演奏効果が十分に出るように、編曲の際に楽譜を工夫したり、楽器編成に仕掛けを施したりしています。このことは学級担任の先生方も知る由もないでしょう。

 小学校の子どもたちは全員プロの音楽家になるわけではありません。技術を鍛えても、心が育たなければ意味がありません。だから私は、音楽がマイナスに働くのではなく、子どもたちにとっての人生の糧となるようにしていきたいと考えています。

三田純子【みた・じゅんこ】
川崎市立子母口小学校 音楽主任・音楽専科

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