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Music People vol.29 小川 佳津子

パーカッションはシンプルな楽器だけに難しいのです。

音楽が好きな両親の元で育った私は、弟とともに物心がついた時から様々な楽器を弾いていました。

その後はテニスと陸上に明け暮れ、シンセサイザーが流行った時期にはエレクトーンにのめり込みました。ジャズやラテンも演奏していて、もし音楽の道に進むならこのジャンルと考えていましたが、結局クラシック系の大学に進学、そこでオーケストラや吹奏楽、室内楽に巡り会うことになります。

卒業と同時にパーカッション・アンサンブルを立ち上げました。また、オーケストラのエキストラとして、都響のマーラーやメシアンシリーズ、武満作品のレコーディングにも参加させていただき、私の音楽の土台が少しずつ固まっていきました。

振り返ってみると、最初から決め打ちした訳ではなく、好きなことを好きなだけやってきたなぁと、改めて幸せな道を歩んできたように思います。

パーカッションの元は『物と物の摩擦によって起こる音』です。言葉が無かった時代から、喜びや悲しみの感情表現、合図を送る手段として、ヒトと共に歩んできた楽器だけあって、シンプルでありながら、直接的で感情そのもの、自然そのものでもあると思います。
現代パーカッションはいろいろなジャンルで活躍しています。使われる楽器も多種多様で、それぞれを極めようとすると、何年かかるのだろうと気が遠くなります。

私は、音色を作ること、タイミングを計りビートを作る作業が好きです(ここは敢えて作業と表現します)。一音一音の発音のポイントを探る作業とも言えるのかな・・・声にしかできないと思われる『ささやくように』演奏することも私の夢です。

ここ数年、私は技術と表現とを分けるのではなく、『表現をするための技術』のことを常に考えるようになりました。いわゆる職人技のようなもので、メカニックとは異なるテクニック(技術)です。

(簡単に説明すると、メカニックとは、基礎にあたるものです。例えば手が速く動くとか、テンポがしっかりキープできるとか、ルーディメンツやスケールが頭に入っているかなどです)
つまり自分の感情・イメージや目指す音楽の完成を、自分のメカニック・テクニックを駆使して表現することを考え続けているとも言えるでしょう。

パーカッションは、演奏者の形や型を見て、視覚的に真似することが容易です。そのため表現の幅が広くなっているように思えますが、実は表現の深さは何も変わっていないのだと思うことが多くなりました。

音のボリュームだけに傾倒しない表現力。パーカッションはシンプルな楽器だけに難しいのです。

奥深い音楽とパーカッションの魅力。それは私の人生そのものなのかもしれません。

小川 佳津子【おがわ・かづこ】
東京藝術大学卒業、同大学院修了。
カーネギーホール、楽友協会ホール、北京音楽庁にて招聘コンサートを開く。東京都響、東フィル、N響団友オケや警視庁音楽隊、アンサンブルリベルテ川口、東海大高輪台、春日部共栄、常総学院などの吹奏楽団ともコンチェルト等を共演。
都響、読響、札響などオーケストラのエキストラとしても活動。
現代楽曲演奏ユニット「EIT」のメンバーとしてスロヴェニア現代音楽展に参加、最小の吹奏楽団「セブンステラ」、打楽器アンサンブル「小川佳津子&ステラ21」のリーダーを務めるほか、スローワー/マリンバコンチェルトの初演を行う。
打楽器を有賀誠門・塚田靖・G・ピータース、マリンバを高橋美智子・小川雅弘、ピアノを田尻明規・イルジ・フビチカ、エレクトーンを桐野義文・江川マスミに師事。

<指導・審査>
尚美学園大学、洗足学園音楽大学、尚美ミュージックカレッジ専門学校、埼玉大学吹奏楽部、戸田交響楽団、吹奏楽コンクール・アンサンブルコンテスト、JILA音楽コンクール、日本クラシック音楽コンクール、日本管打楽器コンクール、さかい九頭竜音楽コンクール、福井マリンバセミナーマスターコースなど。
こおろぎ社専属クリニシャン、CANOPUSスネアドラムエンドーサー及びCANOPUS吹奏楽楽器アドバイザー。JBA日本吹奏楽指導者協会会員

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