Music People vol.23 服部 恵
音楽に対して誠実であれば自然と人とつながり広がりめぐりあえるのです
私は福岡県太宰府市で生まれ育ちました。
音楽のはじまりは幼稚園。幼稚園で歌った曲を、帰宅してはおもちゃのピアノで弾いていたそうです。しかも和音つきで。それを見兼ねた両親が親戚の家からピアノを送ってもらい音楽との出会いが始まりました。そして、運動会の時、3つの太鼓がついたトリオドラムを叩く事となり、今となっては、これが私の原型ともいえる打楽器の初舞台だったのでしょう。
小学校ではピアノを本格的に習いはじめ、その厳しい練習から逃げるようにドッジボールにはまり、公園の石段から飛び降りたり、とにかくやんちゃだった私は、突き指や骨折をしてはピアノの先生に怒られる日々。中学生になると、吹奏楽部に入部。打楽器パートになるという選択はこれっぽっちもなく、トランペットかサックスがいいな~と思っていたところ、1つ年上の幼なじみが『めぐちゃんは、打楽器だから~』と一言。断れない性格だったので、『う、、うん。』これが、私の本格的な打楽器人生のはじまりです。
入部した吹奏楽部は、マーチングでは九州大会常連校、福岡県で1位を争う勢いのある学校で、とにかく大変でした。
さらに音楽にとても厳しかった顧問のF先生。ある時はシンバルの音一つで合奏に参加させてもらえないことも。悔しくて悔しくて、泣きながらシンバルをひたすら叩いた事を覚えています。叩けば音が鳴る打楽器がこんなにも奥深いものかと、ここで打楽器の面白さに気づき始めます。
高校に入って、吹奏楽同好会に入部。2年の頃、顧問の先生も変わり少し低迷していたこともあり受験勉強のために部活を辞めようかと考えていましたが、当時音大受験のためにレッスンに通っていた九州交響楽団の関修一朗先生に、吹奏楽は続けた方がいい。といわれ気持ちを改めました。その後顧問が変わったことで、私が指揮を担当することが多くなり、部内も自主性がより高まりました。
部員全員で1からつくりあげる音楽は格別なものがあり、この当時の貴重な経験は私の大きな力となり、今の仕事にもとても生かされています。
東京藝術大学に入学してからは、大学教授の有賀誠門先生のもと更に打楽器の奥深さを勉強し、卒業してからも多くの仕事に関わらせていただきました。屋外フェスに参加したり、客船で演奏したり、コンクールをうけたり・・・。打楽器というのは、いろんなジャンルの音楽とつながっているので、出会った音楽の数だけ経験も楽器もどんどんと増えて、家はまるで倉庫のようです。(打楽器奏者あるある)
いろんな仕事をする中で、様々なジャンルの音楽をたくさん聴きました。吹奏楽の曲の中でも、いろんなジャンルの曲がありますし、表現の幅をひろげる意味でも、絵画、写真、映画、言語、文化、多くのものを見て聴いて感じることで演奏の表現が広がっていくと思います。
吹奏楽部で活動していると、忙しくてなかなか他ジャンルのものを聴く時間がないのもよく知っていますが、しかし音を表現することには視野を狭めず、多くのものを見聴きしてもらいたい、そして音楽に対して誠実であって欲しいと願います。
私は、打楽器という楽器を通して、人として多くのことを学んでいる気がします。音楽は、人が奏でているのですから、その人自身の経験や人生がにじみ出てきます。人に対して誠実であるように、音楽に対して誠実であれば、自然と人とつながり、広がりめぐりあえるのです。
私もこれまで、誠実であることがどれだけ大事か感じる事が多くありました。
最後に、私の祖父が『音楽は一生勉強だ』と言ったことがあります。私自身、勉強という挑戦を続け、音楽にいつまでも誠実でありたいと思っております。
服部恵ニューアルバム
『Vibra-Canto BLUE』
1. Texas Hoedown
2. Blues for Gilbert
3. Suite For Lute In G Minor
4. Over The Rainbow
5. あららせうせう
●アルバム紹介●
「ヴィブラフォンという楽器を知って、楽しんで欲しい」服部恵のそんな思いを形にしました。
ヴィブラフォンソロの楽譜の出版数は増えてきましたが、マリンバの楽譜と比べると多いとは言えません。
今回は、楽器を提供していただいた4社(Saito,Deagan,Musser,Majestic)の楽器を全て使ってレコーディングしました。
ヴィブラフォンの澄み切ったサウンド、楽曲の美しさを存分に楽しんでください。
Website http://percussion-meg.jimdo.com/
服部 恵【はっとり・めぐみ】 福岡出身。東京芸術大学卒業。ブルガリア国際打楽器コンクールDuo部門2位、特別賞受賞。イタリア国際打楽器コンクールVibraphone部門1位受賞。久石譲コンサートツアーにて共演、TV出演。日本テレビ開局55年記念企画にて、音楽指導、TV出演。『Festival de Marimbistas in Mexico』にて招待演奏。日本の客船の国内外クルーズに乗船、演奏披露。ミュージカルのオーケストラメンバー・フリーパーカッションとして、ライブレコーディング、サポートなどジャンルを問わず活躍中。 |