Music People vol.68

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Music People vol.68

Music People Vol.68

あなたは自分の音が好きですか?


三浦 こと美 「自分の音が嫌いなんです・・・」、私がクラリネットのレッスンをするようになってから、この言葉を口にする生徒さんとたくさん出会ってきました。“自分の音が嫌い“という生徒さんの音を実際に聴かせてもらうと、とても素敵な音色を奏でる人ばかりで「そんなに言うほど悪い音じゃないと思うけど、どこが嫌いなの?」と逆に聞き返します。そして返ってくる答えは「音がペラペラで〜、キンキンしてて〜、固い音で〜」など、自分の悪いところしか見ていない人がほとんどです。これはとてももったいないことだなと思うのですが、かくいう私も昔は自分の音があまり好きではありませんでした。なので、このコラムは“自分の音が嫌い“と思ってしまう人にこそ読んでほしいと思います。


三浦 こと美 私が一番最初に自分の音に自信を持てなくなったのは中学生の時です。吹奏楽部で毎日練習に明け暮れている日々でしたが、合奏の時に「クラリネット音が固い!」「ペラペラな音で吹かない!」と指摘されたのがきっかけです。特に高い音が綺麗に出せなくて、とても悩みました。当時はまだプロの先生についていなかったですし、YouTubeもスマホもありません。お父さんのパソコンを借りてクラリネットのことを調べたり、図書館でCDを借りたりして“良い音”とは何か?を考えていました。そうやって辿り着いたのは“音は小さいけれど、とにかく雑音を排除した柔らかそうな音“で吹くことでした。しかしこれは間違いで、息が入っていない芯のない音となってしまったのです。

その間違いに気づいたのはプロの先生の元でクラリネットを習うようになってからです。「あなたの音はパッと聴いた感じ柔らかそうに感じるけど、音の芯がないね。何をそんなに制限しているの?」と言われたのです。私は「音が固い、汚い」と言われるあまり、楽器を十分に鳴らすことから逃げ、音を出すことに臆病になっていたのです。これは今でも中高生の生徒さんがつまずくポイントだと思います。汚い音を出したくないから息を控えめにしてしまったり、臆病になって縮こまった音になってしまう人が多くいます。

一番最初は、たくさんの息を使って楽器をきちんと鳴らすことがとても重要です。たくさんの息で楽器を鳴らそうとすると自分では綺麗と思えない音が鳴ります。最初はそれでいいんです。息を十分に使うための練習をとにかくこなし、楽器がしっかり鳴るようになってから初めて音色を良くするための練習に入っていくのです。そうして私は臆病な音の出し方から、しっかり楽器を鳴らした音が出せるようになっていきました。

大学生になってからも自分の音に自信が持てなくなる時期がありました。ある日のレッスンで音出しの瞬間から「そんな雑な音を出すやつがいるか」と先生から言われたのです。今思えば、確かに音出しとはいえ、最低音のミの音をぶっきらぼうに吹いていたな…と思うのですが、当時は丁寧な音とは何か?と悩みました。大学生になると、周りには自分より素敵だな、綺麗な音を出すなと思う人がたくさんいます。そんな環境で自分と他人を比較し始めると自分で自分の首を絞めることになっていきます。『私の音はなんて雑で汚いんだろう、あの人はあんなに素敵な音が出せているのに、どうして自分は上手くできないんだろう・・・』こう思いはじめたら負のループのはじまりです。自分が出す音の全てが雑な音に聞こえるのです。

三浦 こと美 そんな負のループから救ってくれたのは妹の一言でした。ある日、私が「自分の音が良くない、あの人の方が良い音出すよね」と漏らすと、妹は不思議そうな顔をして「私はこと美の音が好きだけどな。〇〇さんの音も好きだけど、こと美の音が一番好きだなって思うし比べる必要はないと思う」と言ってくれたのです。私の妹は音大には通っていませんが、中高6年間吹奏楽漬けの生活をしていたので、いろんな人のいろんな楽器の音を聴く耳は持っていました。お世辞でもなく、本心から言ってくれた『こと美の音が一番好き』の言葉を聞いて今までの悩みがフッと軽くなったのを今でも覚えています。それまで自分の音の悪いところしか見ていなかったけれど、私の音を好きと言ってくれる人がいるのは私の音にも良いところがあるからだと思えたのです。

きっと“自分の音が嫌い“という人は、自分より素敵な音を出す誰かが近くにいて、その人と比べているのでは?と思います。自分の理想とする音のイメージを持つことは音色を良くしていく上でとても大事なことですが、自分の良いところを無視して他人の良いところばかりを見てしまうのは危険です。あなたの音にも良いところが必ずあることを忘れないでください。

誰かと自分を比べそうになった時、ぜひ思い出して欲しいことがあります。それは“自分以外の人はみんな素敵に見える“ということです。「隣の芝生は青く見える」っていうやつです。レストランで隣の人が食べてる料理がやけに美味しそうに見えたり、同級生のソロがとても素晴らしく見えたり、SNSで活躍している人がやけに魅力的に見えたり…例を挙げたらキリがないですが、人は自分のことはなかなか客観的に見れません。自分に良いところがあっても見逃してしまう人がほとんどです。だから他人と自分を比べて、自分のことを嫌いになっちゃうんです。それに気づいてから、私は自分の音が嫌いと思うことはなくなりました。もちろん、もっと良い音になりたい!とは常日頃から思っていますが、良い音になりたいと思うことと、自分の音が嫌いと思うことは違います。どうか自分の音を嫌いにならないであげてください。自分の音が嫌いと思っているとクラリネットが楽しくなくなっちゃいますよね? 嫌いと思うのではなく、自分の音はまだここが足りないから、もっと良くするために〇〇しよう!という前向きな捉え方をすることができたら、練習ももっと楽しくなります。

\そんなこと言ったって、すぐに自分の音を好きになるなんて無理!/

と思ったあなた。好きにならなくてもいいんです。自分の音でちょっとでも良いなと思うところを探してあげる、それだけでいいです。例えば自分ではなくて、仲の良い友達に「この音どうかな?」と聞かれたら否定的なことばかり言わないと思います。どこかしら良いところを言おうと思いますよね? そんな感じで自分の音の良いところを探すことから始めてみてください。どんなに小さなところでもいいんです。例えばチューニングのB♭が問題なく鳴らせた!とか。え?そんなのできて当然じゃんと思うことでも、クラリネットが吹けない人からしたら結構すごいことをやっているんですから。そうやって少しずつ自分の音の良いところに目を向けられたら、案外自分の音は悪くないなと思えてきます。自分の音が嫌いと思いながら練習するより効率も圧倒的に良くなるので、ぜひこの考え方を採用して欲しいなと思います。

楽器の音色はその人の個性です。“自分の音が嫌い”と思う人が一人でも減って、楽器を演奏する全ての人が自分の音も他人の音も素敵だなと思いながら演奏できたら、幸せだと思いませんか?

三浦 こと美



カイト/嵐(NHK東京五輪ソング)


ドライフラワー/優里





三浦 こと美

三浦 こと美【みうら・ことみ】
12歳よりクラリネットを始める。
第11回万里の長城杯国際音楽コンクール管楽器部門高校の部第1位、第19回日本クラシック音楽コンクール高校の部4位(1.2位なし)など受賞。武蔵野音楽大学卒業。同大学卒業演奏会に出演。第33回ヤマハ管楽器新人演奏会クラリネット部門に出演。これまでに竹森かほり、三界秀実、秋山かえで、十亀正司の各氏に師事。
現在、フリーランス奏者として吹奏楽やオーケストラに参加。
また、アンサンブルでの活動も積極的に行い、第11回ルーマニア国際音楽コンクールアンサンブル部門 第1位をはじめ、第15回大阪国際音楽コンクールアンサンブル部門 、第8回セシリア国際音楽コンクール室内楽部門 最高位 等を受賞。イタリア・ピエディルーコ国際音楽祭に参加、現地オーディションでスカラシップ獲得。2015年度ヤマハ音楽支援制度「音楽活動支援」の対象に選ばれ、銀座ヤマハホールにてコンサートを開催する。
演奏活動の他、小学生~60代まで幅広い年代の個人レッスンをはじめ、後進の指導にもあたっている。
『Trio Horamiro』『クラリネットアンサンブルSHAKE』メンバー
スイカが大好物。




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